とりあえず、仕切り直し


31/10/2005 いろいろおっかけ週間

ここ3ヵ月くらいかけてじわじわと読み進めていた「大空のサムライ かえらざる零戦隊」(坂井三郎著、光人社NF文庫)をようやっと読み終わった。「大空のサムライ」というタイトルでずいぶんといろんな版があるようだが、これはフツーに新刊書店で買えた比較的最近の文庫。今は続編の「続・大空のサムライ 回想のエースたち」のほうをじわじわ読み進めているところ。

ラストとか、列機を狙っていたグラマンとの巴戦から撃墜までの心情の振幅とか、海を埋め尽くす米軍の艦船を見て「この戦争は負けだ」と直観するところとか、印象的なエピソードは多いが、圧巻はあとがき。自分は天才や奇人じゃない、凡人だからこれくらい努力しなければならない、と書いてあるその日々是訓練ぶりときたら、もう。あのぅ、それをやりとおせる人を世間じゃ天才や奇人と呼ぶと思うんです……。どーでもいいけど「昼間の星をみつける」って訓練は、たとえ氏の全盛期の視力をもってしても、現在の日本じゃ無理だよね、多分。

氏の海軍航空隊への愛情と愛惜とに満ちた本なので、軍に対して批判的な記述は唯一といってもよい、戦争終盤に敵艦にたどり着けるかどうかもあやしい戦力で特攻を命じられたときだけなのだけれども、少し考え込んでしまった。もちろん、今読んでいる続編にある訓練過程の詳細な回顧を見るだに、これだけコストをかけて育成した専門職の極みみたいなパイロットを使い捨てにしようなんざどういうマヌケだとは思うし、政府レベルならとっとと「よりマシな負け方」へ持っていく努力をしろとも思うけれども。批判するのは簡単だが、では、現場の指揮官レベルで何ができるか、とね。

さてすでに先週になってしまったが、ライブ×2と「夕凪LOOP」。菅野よう子から巣立って初のアルバムに加え、TVCMの「ハニー・カム」PVがあまりにも寒かったので心配していたら、大丈夫全然OK. でもPVのスタッフは変えてくれ。「ハニー・カム」は寒いわ「ループ」は曲とまるっきり合っていないばかりか曲抜きにしても起伏すらないつまらん映像だわで、CD-ROM見て頭抱えちゃったよ。

良くも悪くも「自分自身」で歌う人なんで、変化は大歓迎。むしろ25歳にもなって出てくる歌が「I.D.」と同じだったら失望しちゃうよ。あれは18歳の心底から出てくる歌だったから良いわけで。「冬っぽいスカ」という注文で上がってきた曲に「冬ですか」なんてスットコドッコイな歌詞を付けるくらいの余裕がある人のほうが、わたしは好きだし人としても好ましいと思う。20代後半(……!!)の女性ならね。

ちなみにライブでココロに突き刺さった真綾語録は「いい年してとか思ったら負けです! わたしも結構いい年になりました」でした。いや、もう、なんていうか、フツーに「いい年して」と言われるより言葉のナイフが臓腑をえぐる……。

でもって土曜日には、六本木でanimecs TIFFの「最強のSF伝説」へ。今年の東京国際映画祭関連はこれだけ。1本目はロマのフ比嘉監督の「URDA」。人物を3Dで動かしているんだけど、「重さ」がまるで表現できていないアクションにがっくり。全員中身からっぽの風船みたい(メカは良いんだけど)。つーか、シナリオが寒い。声優の下手すぎる演技が寒さに拍車をかけてるし。2本目は吉浦康裕監督(STUDIO六花)の「ペイル・コクーン」。こっちはいいな。ありがちといえばありがちだが、好み。DVD出たら買う。他のも見てみたい。

でもって、休憩をはさんで「火の鳥〜黎明編〜」全話。の、前に、高橋良輔監督のトークショー。うわあ本物が5m先にいるよ! 手塚治虫について、最初は読者で「漫画の神様」で、虫プロに入社して師匠になり、業界の先輩になり、それから亡くなって10数年経った今ではまた神様になってしまった、など。来年は2本TVシリーズの予定があるとか。おお。「火の鳥」のほうは、原作に忠実なアニメ化だね。いや、「黎明編」をそんなに何度も読み返したわけじゃないから、印象としてだけど。ニニギの軍勢に出会った猿田彦が、初めて見た馬という動物に驚くところが、ダイナミズムがあって好き。

追加でなぜか「ワンダと巨像」のデモ上映。ホントになんで? これは買おうかどうしようか迷ってるんだよなぁ。巨像のデザインがすごく良いから。とくにこれとか→Wired Newsの紹介。でもわたし、今ようやく「ICO」をやっているところなんだよね……。

で、遅めの昼食を摂って麻布十番の商店街とかその近辺をちょっと散歩して、ついでに真綾ちゃんのフリーライブへ。ついでだってば、本日のメインイベントは高橋良輔のほうだってば。通りすがりの人も聴けるフリーライブという性質上か、よそいき猫っかぶりなライブでした。「愛が足りない」とか暴言はかないし:-) 歌詞につまって「まーちーがーえーたー」とか歌ったりしないし:-) でも、本当に昔のあぶなっかしい感じと違って歌声に力があるなー。雨天でコンディションは悪かったけど堪能した。


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