とりあえず、仕切り直し


18/09/2009 虚仮の一念というか

なんだか紙を破るような音がしたので様子を見に行ってみたら、買い置きで積んであった爪とぎをアキが引っ張り出してかじっていたのだった。パッケージのダンボール箱を食い破って、中身をひっぱりだして。その根性に免じて開封した奴はアキのものになったが、もちろん残りは猫どもには開けられない戸棚にしまいこんださ。

「皇軍兵士の日常生活」(一ノ瀬俊也著/講談社現代新書刊)を読んだ。タイトルから「おはようからおやすみまで兵隊さんの暮らしを見つめる」内容かと思ったら、どちらかというと「揺り篭(徴兵検査)から墓場(戦死公報)まで」だった。

父方の祖父の位牌は裏が「昭和二十年七月十五日 鈴レイテー島」となっていて、最初に見たときはあとひと月生き延びればと思ったのだが、よくよく考えるまでもなくそんなの「まあだいたいこの時期までには所属部隊が全滅していたっぽい」くらいの日付に決まっている。レイテ島の下っ端兵士だもんな。死亡認定について結構紙幅をさいていたので、そのあたりを想像する参考になって興味深かった。

30/09/2009 老紳士の謎

ところで山中貞雄の特集上映は、監督作品「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」「人情紙風船」、脚本を共同執筆した「戦國群盗傳」、玩具フィルムで「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」「小笠原壹岐守」、それに「山中貞雄パラパラ漫画アニメ」を見てきたのだった。

とにかく作風がモダンで洒落ている。「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」なんか、脚本一字一句演出ひとつ変更なしでそのまま音響を良くしてカラーにするだけで、昨日撮った映画ですと出しても誰ひとり疑わないだろう。それから「山中貞雄パラパラ漫画アニメ」が地味にすごい。学生時代の辞書に落書きされたもので、それ自体はあなたもわたしもやったことがあると思うが。丸と棒だけの単純な人間や馬ながら、集団での移動や剣戟が躍動感も豊かに表現されていて、ちょっと慄然とするような才能が伺える。生きていればいろんな変化があるわけでタラレバの話に過ぎないとはいえ、やはりこの人材がよりによってあんな戦争で失われたというのは悔やんでも悔やみきれない損失だったというのはわかる。

最終日に「人情紙風船」を見た後、ロビーに掲載されていた当時のポスターをながめていたら、70歳は過ぎたと見られる老紳士に「お若い方から見ていかがでしたか」などと話しかけられたり。出演俳優が現代の誰某の縁者であるとか、元ネタとなった「髪結新三」との関連であるとかを教えてもらったのだった。28歳で亡くなった山中貞雄が生誕100年なわけだから、ある程度もののわかった年齢で封切当時リアルタイムで見ていたとしたら若くても80歳前後になるかな。これくらいだと個人差がが大きいから、ハテあれはそのような人だったのか、否か。


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